重伝建地区周辺の伝統的建物の取り壊しが後を絶たない、制度を駆使して保存の手を打とう
更新日:2020年9月16日
川越ゼミで浮上した重伝建地区外の歴史的建物の保存。昔からの課題だが、最近、重伝建地区外の歴史的建物の取り壊しが目立って来た。八女も例外ではない。八女の「町家紳士」北島力さんが、制度を駆使して、重伝建地区周辺、そして重伝建地区になりきれていない歴史的地区の伝統的建物を守ろうと訴える。歴史都市(HUL: Historic Urban Landscape)の保全は、町並み憲章の改定でも取り上げた通り、私たちの最大の課題のひとつだ。北島さんの趣旨をハンドアウトにまとめ添付した。ダウンロードしてご利用ください。
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◉町並み保存の活動における今日的課題
1975年(S50)に文化財保護法が改正され、市町村の歴史的町並みを保存継承する取組みを、国が支援する伝統的建造物群保存地区制度が発足しました。制度創設から今年で45年を迎え、1976年(S51)に7地区が選定された重要伝統的建造物群保存地区(=重伝建地区)は、120地区を超えるに至っています。
景観法に続き、近年では、地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律の制定等の追い風により、歴史と文化を活かしたまちづくりを進める自治体が増加しつつあります。
その一方で、少子高齢化社会の急激な進展は、重伝建地区でも大きな課題となっており、町家等の歴史的建築物の空き家の増大に直面しています。
空き家は長く放置されると家屋の老巧化が進み、危険家屋となり社会問題化します。そこで、空き家再生活用の取組みを住民と行政の協働で推進することが強く求められています。
◉重伝建地区の周辺環境が急速に悪化
更に深刻なのは、重伝建地区の周辺に存在する歴史的な建築物の空き家です。重伝建地区のバッファゾーンとして、保全措置を取っている自治体は、一定のコントロールができているところもありますが、全く保全措置のないところは、保全に対し行政の支援がないので、どんどん解体をされている現実にあると思います。
それはまた、重伝建地区のような一定の強制力がない歴史的な町並みの場合でも、なんらかの面的な保全措置が取られていて一定のコントロールができていると思いますが、そうでない場合は、歴史的な建築物の空き家の大半が、解体を余儀なくされていると思います。
そのような歴史的な建築物を使いながらどのようにまちづくりに生かし、後世に引き継いでいくのか、今一度私たちの活動を検証し、再挑戦することが求められているのではないでしょうか。
◉重伝建地区の周辺環境及び重伝建地区以外の歴史的町並みの保全
市町村は、国の景観法による「景観計画区域」、歴史街づくり法による「歴史的風致維持向上計画の重点区域」などの制度導入による「街なみ環境整備事業」及び「空き家再生等推進事業」(国土交通省所管)などの活用が有効と思われます。
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*写真は八女の重伝建地区外での伝統的建物の取り壊しの様子です(2018)。添付のハンドアウトでは、2枚目で制度をフル装備している川越の例を紹介しました。八女の場合も川越の場合も、導入した制度が十分な効果を発揮するためには、制度の運営に持続的な意思や決意が欠かせないことを示しています。町並み運動としては、各自治体にこれら制度の導入を強く働くかけるとともに、導入後も制度の運用に積極的に参加し、せっかくの制度が大きな効果を発揮するよう活動に取り組みたいと思います。