第8回 関東町並みゼミin佐原が開催
関東町並みゼミは、第32回全国町並みゼミ佐原・成田大会のプレゼミを関東地方に拡大して行われたことから始まった。今回第2ラウンドとして再び佐原でゼミを開催することになりました。当日は2週間続きの台風に見舞われ最悪の天候となりましたが、午前中の町並み見学には30名ほどの参加がありました。案内は当会の最高齢ガイド92歳になる吉田昌司が案内しました。声の大きさと滑舌の良さに皆驚きの表情でした。午後の全体会は与倉屋大土蔵で行い百名弱の参加がありました。ここは全国町並みゼミでも使用した会場で、あの懇親会を思い出した参加者も。また初めての参加者も小屋組みの妙技と254坪が醸し出す空間に感嘆したようでした。開催地からの報告後、千葉大学マーチン・モリス教授による「歴史的町並みの価値と保存を支える人々の思い」と題した基調講演が行われました。教授はイギリス人でケンブリッジ大学から東京大学へ留学した経歴を持ち、母国イギリスの建造物保存と日本を比較しながら建造物保存の考えや方法等について流暢な日本語で講演されました。
第1分科会「町並み保存の制度と市民の関わり」は、苅谷勇雅氏をコーディネーターとして、桜川市真壁の登録文化財から重伝建選定や歴まち法の取り組み報告をディスカバーまかべ・吾妻周一氏が、栃木市の町並み保存の動向を栃木地区町並み協議会・阿部佳司氏が報告して議論が進められました。真壁における東日本大震災復興では伝建や歴まち法制度が有効に働いたことが確認されました。栃木市おいては、現在歴まち法の計画作りが始まっているが、蔵の街の栃木地区をあらためて前面に据えた地区住民ぐるみの歴史まちづくりが必要との認識で一致しました。
第2分科会「町並み景観は歴史性を踏まえて創り出すもの」は、荒牧澄多氏をコーディネーターとして、川越市の報告を川越蔵の会・松本康弘氏が、石岡市の看板建築保存を地元建築家の島田哲氏が報告した後、佐原の保存修景の実績を髙橋賢一が発表して議論が進められました。第2ラウンドで、課題とする修景についてより深まった議論が展開されようとした時、香取市から洪水警報が発令され、JRからは不通の可能性が知らされ、中断せざるをえなくなりました。
佐原の保存・修景は、平成6年から年に10件程度行われてきており歴史的景観が整い、まちづくりに貢献できるようになってきています。しかし、東日本大震災復興の頃からまちに新たな兆しが見られるようになり、町並み保存が大きな曲がり角に来ていることを感じています。このような状況から今回のゼミは、改めて保存や修景論を展開するキックオフにしたいと考え、サブテーマを「町並みはみんなの宝物、その歴史的風致を保つには」としました。議論半ばで台風襲来という思わぬ事態となり残念な気持ちも残りましたが、熱心に参加してくださった皆様や関係者に心から感謝申し上げます。